普段はあんまり読まない「アウェー」なタイプの本を読んでみる。そんな自分だけのお楽しみ企画で選んだ2冊目が、東山影良の「ライフ・ゴーズ・オン」。
初めて読む作家さん。ほんとは「ブラックライダー」読もうと思ったけど、ぶ厚さにびびってやめた。そっちはまた別の機会に。短距離通勤者かつ細切れ時間で動いてるので、300頁未満の「ライフ・ゴーズ・オン」の方がとっつきやすかった。
始まりは病院のICUからで、どうやら主人公は瀕死の状態にあるらしいことがわかる。撃たれたのかな?刺されたのかな?「青春ノワール小説」との触れ込み、かつ大藪春彦賞受賞とのことで、ハードボイルドでノワールな、悪い奴と丁々発止のやり取りが繰り広げられるのかと、わくわくしながら頁をめくってった。
しか~し。死を目前にした人が、走馬灯のように人生を振り返るがごとく、どんどん過去に遡っていって、どうやら思ったような「ノワール」、黒社会とかそういうのとは、あんまし関係なくお話しすすんでいく。ノワールではないけど、ハード。
悪い奴・悪そうな奴を身近にしながら、そういうタイプの人間と、つかず離れずの距離を保って、決して同化しない。そんな少年の成長を、内面の葛藤をかなり克明に交えながら追っていくの。
読んでて思った。あっこれ「青レンジャー」タイプの男の子の話だって(※)。集団から一歩引いていて、醒めた目で世の中眺めてるような、でも心は正義寄り。そんな感じの、取扱い面倒な男の子。白髪優等生キャラじゃなくて、黒髪不良少年タイプ。なのになぜか女の子は影のある異性に弱いから、「ライフ・ゴーズ・オン」でも、主人公モテちゃってる。結構ひどい奴なのに。
(私は青レンジャー≒面倒くさいタイプって思ってるけど、もしかして男性目線だと、青レンジャーって結構カッコいい奴なんだろうか?その辺の感覚はよくわかんない)
ひどい奴なんだけど、世の中に対する違和感や何かを、自分の言葉でわかりやすく表現する術を既に獲得してる。そこが他人から一目置かれる彼の魅力でもあるし、カッコ良く見えてしまう要素でもあるし、身を滅ぼす遠因にもなっちゃってる。
病院のシーンから始まるだけあって、いつか堕ちるんじゃないか。ロクでもないことになるんじゃないか。そんな予感通りにお話し進んでいくんだけど、そうなっても必然としか思えなかったし、あぁ可哀そうなんて感情は、どこからも湧いてこなかった。
それくらい、「青レンジャー」な彼には全く共感抱けないのに、その内面を知っていくことはとても面白かった。好きではないけれど、興味深いし、そこは肯定するっきゃないでしょうという感想しか生まれてこない。そんな矛盾した感情が生まれてくることを楽しんだお話しでした~
平易な表現でとてもわかりやすく書かれているのに、書かれていることは個人の内面に深ーく立ち入ってるので、わかりやすいとは多分言えない。でも、そのわかりにくさがよかった。
※単純に人間を5つのタイプ、赤=リーダー・黄=大食い・緑=爽やかな末っ子+女の子枠と、ざっくり大ざっぱに分けて考えてはいけません。