クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

【読書感想文】キョウカンカク 美しき夜に

第43回メフィスト賞受賞作を全面改稿したという、「キョウカンカク 美しき夜に」を読んだ。きれいな表紙につられて買った。デビュー作だそうですが、解説によると大幅に改稿されたとのこと。なので、既読の人にとっても新しい物語になってそう。

 

連続殺人鬼”フレイム”に妹を殺された天弥山紫郎は、音が見える「共感覚」保持者である探偵・音宮美夜と捜査に乗り出す。共感覚という特殊能力をもってすれば、犯人逮捕は容易だと思われたが、動機は依然不明のまま。一方探偵助手の山紫郎は、探偵・美夜とは別の人物に疑いを抱いていく。という、ホワイダニット(=動機のミステリ)が焦点となってます。

 

探偵・音宮美夜のキャラが立ってて良かった。これくらい奇矯な人物を探偵役にもってくると、リアリティから遠く離れた地平で自由に遊べる感じがして、面白かった。息抜きにもってこいだった。

 

普段会話で「コピペして」なんて使ってるけど、小説で「コピー&ペースト」が出てくるとやっぱ新鮮だった。「デスノート」や「寄生獣」、セカイ系まで飛び出してきて。そこにクリスティもちゃんと(というと何だか上から目線だけど。。)加わって。たくさんのエンターテイメントに触れてきた人が、小説を表現の舞台に選んで、新しい「面白い楽しい」に挑んでる。そんな風に感じた。

 

音が見える「共感覚」という設定も、マンガみたいにビジュアルな方が絶対簡単に説明できそうなのに、あえて文字表現に挑むところが何ともチャレンジング。探偵の設定からしてアレだし、全体的に虚構性たっぷりで、リアリティ限りなく薄い。

 

限りなく薄いリアリティだからこそ、普遍的な人の性(サガ)みたいなものが濃厚に感じられたのかも。同じ著者による、第13回本格ミステリ大賞の候補作「葬式組曲」も読んでみたいと思った。

葬式組曲 (ミステリー・リーグ)   キョウカンカク 美しき夜に (講談社文庫)

 

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最近は自分にとって読みやすい本ばかり手に取っていたので、たまには”アウェー”な本にも手を出してみようと思った。今は東山彰良の「ライフ・ゴーズ・オン」読んでる。食わず嫌い良くないわー。普段読まないジャンル読むと、えらく新鮮。いつもは使わない筋肉も使って、ストレッチに励んでる感じ。