クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

チーズとサイエンスのマリアージュ『チーズの科学』読んだ

10年前あるいは20年前と今の日本の家庭料理を比べた時、もっとも顕著な違いは「チーズの登場頻度」じゃないかと思ってる。特に最近人気のレシピ動画では、デザート以外でもチーズが頻出、トローリとろけて伸びてる。

 

すっかり日本の食卓でも身近になったチーズについて、その歴史や作り方、あるいはチーズの美味しさの秘密や体によい影響をもたらす機能性まで網羅した一冊、『チーズの科学』を読んだ。

チーズの科学 ミルクの力、発酵・熟成の神秘 (ブルーバックス)

チーズの科学 ミルクの力、発酵・熟成の神秘 (ブルーバックス)

 

 著者は、東北大学で「ミルク科学」の講義を担当する大学教授にして、アジア乳酸菌学会連合の会長など要職を歴任されているガチの専門家。

溶ける、伸びる、裂ける!変幻自在に姿を変える地球で唯一のタンパク質を「科学のナイフ」で切る!(本書カバーより引用)

 科学、サイエンスのナイフが入りまくってるので、専門用語あるいは化学用語が6~7割で、化学的素養がある人が読むと、より楽しめる内容になってる。結局のところ食品は、つきつめれば化学になるから、詳細に語ろうとすれば化学的に語るしかない。

 

とはいえサイエンスとは無縁な人間にもわかりやすく書かれているので、チーズ生産現場をより深く知りたいだけの人でも楽しめるようになっていた。

 

グーグルさんに聞けば、とりあえずの答えは得られる世の中だけど、“ハードチーズの違いとセミハードチーズの違い”についてググっても、かえってわけのわからないこととなる。

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(こいつはプロセスチーズ、食感はホロホロ。)

硬さの違いと簡単に言い切れるような違いではなく、もっと複雑だった。複雑なものを簡単に言い切ろうとするから、わけのわからないことになるのかと納得した。

 

わざわざ本を買ってまで読もうとする、“チーズにそれなりに関心のある人向け”の内容なので、それなりに関心のある人が納得できるような知見が詰まってる。

 

チーズといえば、“旅人が羊の胃袋で作った水筒に乳を入れておいたところ、チーズができていた“という逸話が有名だけど、乳をチーズに変えた、凝乳させたのは「レンネット」という酵素

 

ところでこのレンネット、世界のチーズ作りの現場では本物のレンネット以外にも代替品が開発済みで、本物、天然もののレンネットを使用してチーズを作っている国は、今やごく少数派。

 

日本・韓国・オランダは、子牛の胃から作る天然もののレンネットを使用するごく少数派なんだとか。

 

酪農王国でチーズが納豆や豆腐並みに食生活に根付ているオランダでは製法にも厳しく、チーズ後進国で、納豆や豆腐並みのお手頃価格をチーズに求めていない日本では初期の製法そのままを守ってる。と、推理するのも楽し。真相はよくわかりません。

 

経済性や動物愛護の視点から代替品が好まれるあたり、化粧品がたどった道と似たようなもので、化学に近付くと、その行く末もだいたい似たようなものになるもんだな、と興味深かった。

 

チーズも納豆と同じ発酵食品なので、チーズの風味や個性には使用する菌が重要で、スターター用の菌を用意する専門のスターターメーカーがいるとのくだりには、日本の種麹屋を思い出した。

 

どこの国も変わんないね。。

 

日本酒の生産現場でも菌の持ち込みを嫌うように、アメリカの乳酸菌培養の専門家も徹底して無菌状態に置かれる逸話も、面白かった。

 

モッツアレラやクリームチーズのようなフレッシュチーズは熟成が不要で、出荷までも短期ですむけれど、長期熟成が必要なチーズはまさに余裕の産物。

 

ワインとの相性もいい食べ物だけに、食の欧米化がすすめばすすむほど、大衆化と高級品化の二極化は、チーズでも起こるんでしょう。

 

サイエンスのナイフで切り込みまくって、限りなく化学製品に近付いた天然ものと見紛うチーズの大量生産への備えは今からばっちりなんだなと納得できる、科学的分析による知見がいっぱいだった。

 

熟成が不要なフレッシュチーズは一般的には加塩しないそうだけど、つい最近、ワインガーデン2017では、塩入りカッテージチーズ(あるいはクリームチーズ)を食べたばっかり。

 

日本酒を塩で飲むみたいなもんだな、とパクパク美味しく食べ上げて、残念ながら写真撮ってなかったんだけど。

 

小規模チーズ生産者の生き残る道は、種麹屋チーズ版のスターターメーカーをめざすか、大手には作れない冒険した商品を作る、なのかもね。

 

知識や蘊蓄から入りたい人に、とっても向いてる本だった。ただ美味しくいただきたい向きとしては、読んでるだけでお腹いっぱいになりましたとさ。

 

お休みなさーい。

ワインガーデン2017をふりかえる

気持ちよく晴れたと思ったら、天気は急降下。今日からYOSAKOIも始まったというのに、週末まで冴えない天気が続く。こういう時は、予報が外れた方がいいやね。

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今さら先月のイベントを、こっそりふりかえり。さっぽろライラックまつりと同時開催されていた、ワインガーデン2017。過去最多となる100種類超のワインが揃うとあって、今年も大盛況だった。

 

大してアルコールには強くないけど、この手のお祭り的イベントは大好き。

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 パンフレットを事前にじっくりとっくり眺め、“飲むべきワイン”を厳選して挑む気合の入りよう。とはいえ既に売り切れのワインも多く、お目当ての品にありつくには早めの会場入りが何より肝心だった。これ来年の課題。

 

シードル好きなのでシードルに狙いを定めるも、売り切れに泣く( ノД`)シクシク…

 

グラスワインが1杯500円か800円なので、呑兵衛な人はボトルで買った方がお得。会場で飲み切れなかったら、持って帰ればよし。どうしても飲んでみたいものがあれば、来年はそうしよう。来年に向けての課題、その2ができた。

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札幌市ばんけい峠のワイナリーの、シードロワイン。完熟りんごを低温発酵させたものだとか。丸っきりジュースみたいで、氷が欲しかった。

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上富良野にある多田ワイナリーの2015シャルドネ、白の辛口。ほんとはTADAシードルが飲んでみたかったけど、売り切れだった。。ちなみにシャルドネも、「飲みやすい」以外の感想はすでに思い出せず。そもそもワインの味についての語彙も乏しかった。

 

今年は過去最多のワインが並ぶとあって、ワインに関するトークイベントもあり、真面目なワイン好きの人にとっては、より学びのある内容だったのでは?学ばない人でも、美味しく頂きました。

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さっぽろ藤野ワイナリーの、ナチュラルスパークリングナイアガラ2016、泡・白・辛口。ちゃんと飲んだ順番は記録に取ってある。そういうところはマメ。何の役に立つんだ???というところだけ、マメ。

ここまですべて500円のグラスワインで、そのせいかどれもお子様ちっくな舌にも飲みやすいものばかり。大人の味は、800円からか。

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パンフレットの写真とは、似ても似つかぬブツが出てくることもあるフード類。こいつは日高産モッツァレラチーズの味噌漬け香ばし焼き。ソースの海に呑み込まれたせいか、香ばしさや味噌っぽい風味はどこへやら。思いがけない数が出ると、こういうこともあるやね。

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この手のシーフードは、大体写真通り。

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こっちは実物の方が、ずいぶんワイルドな盛り。スモークチキン&ベーコン。光塩学園調理製菓専門学校作だけあって、商売っ気が足りない感じ。ま、いいんだけどさ。美味しゅうございました。

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去年も飲んだ、増毛町の増毛シードル中口。スターキングデリシャス、ハックナイン、ふじ、北斗、紅将軍、つがる、ワルツと7種類のりんごをブレンドしたスパークリングタイプ。中口がいちばん美味しかったので、今年も中口をセレクト。間違いのない美味しさで、この味が好きさ。

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洞爺湖町にある月浦ワイナリーの、ドルンフェルダー2016(樽熟成)。赤のミディアム。ドルンフェルダーというのも、ブドウの品種なんすね、知らなんだ。またひとつ、生きていく上で、知らなくてもいい知識が増えてしまった。。

 

タンニン多めで渋~い赤は苦手だけど、これはそこまで渋くなかった。単にひと口味見しただけの感想です。

 

最後のグラスワインをどれにするか。じっくりとっくり吟味した上でセレクトしたのは、池田町の十勝ワイン、ブルームロゼ。泡でロゼの辛口。悩んだときは、ボトル単価の高い方を選べという法則に従って選べば、悔いもなし。

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ロゼというには、もうちょっと赤い色。メモが間違っていたらどうしよう。。

 

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ビル影が映りこんだグラス。いい色やん。ボトルだと結構いいお値段だった。そのせいか上品な味わいで、ガブガブ飲んではいけない感じ。

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アルコールの後で嬉しい、桃のシャーベット。

 

テイスティングというには十分過ぎる量をいただいて、自宅に帰り着くなりバタンキューで沈没してた。ワインらしいワイン、ほとんど飲んでないんだけどね。

 

パンフレットの記載通りだと、今年は25のワイナリーが出展してたはず。道内に25もワイナリーがあるなんて、そっちの方が驚き。

 

広々としたブドウ畑は、それだけで絵になる。北方になるほど、赤ワインの原料に適したブドウの栽培は難しくなるのだとか。北海道、それも道央以北でも良質な赤ワインができるようになると、温暖化も説得力あるね。美味しければ、なんでもいいんだけどさ。

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今年も咲いた、オオバオオヤマレンゲ。清楚かつ可憐で、いいね。風が強くて、正面からは撮れず。。こっちは去年撮ったやつ。去年の方が、よく撮れてたかも。

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お休みなさーい。

 

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晴れ間

早朝にもかかわらず、なぜか長蛇の列が出来ていた某所。一体何事かとのぞいてみたら、パチンコ店の開店を待つ人の群れだった。平均年齢若め。

 

それが毎朝の風景なのか、新装なんちゃらで特別だったのかはわからないけど、常にない時間帯に常に歩かない場所を歩くと発見があるものよ。

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悪天候もあって運動不足だった週末の分も取り返すように、テケテケ歩き回って始まった週の始まり。青空も久しぶり。大通公園ではYOSAKOIソーラン祭りの準備が進み、道には、北海道神宮祭の到来を知らせる幟がはためいている。初夏ですな。

 

北海道神宮祭は市民のためのお祭りで、観光客もそう多くない。YOSAKOIソーラン祭りは道外や札幌市以外からの参加者や観光客も多く、どっちがより多く街にお金が落ちるかと言うと、間違いなく後者。

 

ホテルが埋まる。交通機関の乗降客が増える。ついでに飲み食いも発生して、見えないところでお金が回ってる。近頃はシェアエコノミーばやりで、思ったほどお金は落ちてないのかもしれないけれど、観光客が落とすお金がないと、回るものも回らない。

 

大きな街は、そこに住む人間の経済力だけではもう公共交通機関も維持できるか怪しいもの。観光客かビジネス客か。とにかく客人の訪れがないと厳しいのさ。

 

本屋で目に付いたので、つい買ってしまった『ミシュランガイド北海道2017』。

 

和食やフレンチといった料理のジャンルに、“イノベーティブ”というものもあり、分子料理でも出てくるのかと思ったけど、ちと違うっぽい。

 

読んでいてもっとも参考になるのは、ビブグルマン。

 

お手頃価格で良質な料理を提供するレストランを紹介しているので、ミシュランガイド中もっとも敷居が低く、ラーメン勢強し。なにごとにもカジュアル化しつつある現代に、もっともフィットしてるかも。お試ししやすい。

 

屋外のフードイベントは、割高にもかかわらずいつも大盛況(ラーメンフェアだと1時間待ちもザラ)で、適切な場所さえあれば財布の紐だって緩みやすい。

 

新規で紹介されてるお店の中には、通り掛かった時には大抵いつもお客さんでいっぱいのお店があり、納得できる。お店がオープンしたタイミングで“名店“と紹介され、その割にはずっと閑古鳥ね、な詐欺まがいのところもあるのが、飲食店が乱立するエリアなのさ。

 

何気に便利なのはホテルの紹介で、“わざわざ”道外から来る人でもまぁ納得できるんじゃないすか、なところが揃ってた。お財布と日程との相談になるとはいえ、欠点の少ないホワイトリストと思えば宿選びも楽になる。

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情報があり過ぎると選ぶのが大変になるだけだから、ある程度足切りしてあると選ぶことに労力使わなくて済む。そもそもコンプリート欲も薄いから、あらゆるところに行ってみなくてもいいのさ。

 

お休みなさーい。

先進国と新興国が直接つながることで起きた悲劇『汚れたミルク あるセールスマンの告発』見てきた

世界一の巨大企業、言わば巨人を相手に闘うことになった末端のセールスマンを描いた『汚れたミルク あるセールスマンの告発』見てきた。

 

ノー・マンズ・ランド』のダニス・タノヴィッチ監督による、実話をベースにした幻の問題作。先進国と新興国が直接つながることで起きる問題を、問題のまま提示してるから問題作。たかが90分のフィクションで、複雑な問題にすっきりした解が出るわけないじゃん。

 

という態度で鑑賞すると、過度の期待も裏切られません。

 

どうすればよかったのか。という思考実験が好きな人なら、楽しめるかも。

 

あらすじ

パキスタンの製薬会社勤務のアヤンは、美しい妻と結婚したばかり。その妻の勧めにより、世界最大のグローバル企業の営業職に応募し、水準には達しないもののやる気を買われて採用される。

 

アヤンが売るのは赤ん坊のための粉ミルク。

 

営業職が天職のようなアヤンは、努力の甲斐もあってトップセールスマンへと成長する。ところが旧知の医師より、不衛生な水に溶かして粉ミルクを飲んだ乳幼児が、多数死亡していることを聞かされる。その事実に愕然としたアヤンは職を辞し、事実を知りながらも販売を続けている企業を告発しようとする。

 

アヤンの人生を知らずにこの物語は語れない

主役であるアヤンを演じるイムラン・ハシュミは、ボリウッド映画界で最も高額なギャラを受け取っているスターだけあって、ハンサム。カッコいい。

 

ハンサムで向上心があって勤勉な男性が、美しい妻を迎えたところからアヤンの物語がスタートする。

 

アヤンの物語を見守るのは、アヤンの告発を映画化しようするドイツ人のスタッフたち。彼がグローバル企業と関わることとなった、そもそもの経緯を経て、まずはアヤンがいかに優秀なセールスマンかが語られる。

 

優秀なセールスマンが、売って売って売りまくったから、被害を受けた乳幼児の数も増えてしまった。アヤンは問題を大きくした張本人でもあって、恐らくは罪悪感から職を辞して、世界最大企業を訴えようとする。

 

が、相手は世界最大企業だけあって抜かりない。

 

まずは元上司のビラルが立ちはだかり、アヤンの手落ちを指摘されてしまう。相手は世界最大企業だから、コンプライアンス対策はバッチリで、恐らくアヤンは“コンプライアンス”なんて聞いたこともないタイプ。

 

ここ、先進国と新興国が直接つながることで起きる問題その1。

 

中途採用のローカルスタッフに、本国の幹部候補生並みの教育が行われていない。行われるはずもない。ペーパーだけ渡されて、自分で勉強してね!の自己責任制。でもさ、いざ問題が発生したら、本国の本社基準で一律に処分されるんでしょ?

 

グローバル企業だから、ルールブックは世界共通。そして売上、成果に厳しいのも世界共通。報酬や待遇とのトレードオフで、成果が求められる。そしてヤンの元上司ビラルは、アヤンの無知、あるいは無邪気さにつけ込んでくる悪擦れした人。

 

結婚後も両親の家に住むアヤンは、近隣の人との関係も良好で、家族や地域に愛されて育った人。だから自分たちに連なる人、同胞に、害を及ぼそうなんて考えもしない。

 

前半でいっちゃん好きなのは、就職試験を控えたアヤンのために、家族や親戚あるいは近隣の人が寄ってたかって、彼をステキビジネスマンに見えるよう改造するところ。改造といったって、スーツ貸したり靴貸したりするだけなんだけどさ。でも、アヤンが家族や地域から、大切にされてきたことがよくわかるシーン。邪気なんて、持ちようもない。

 

存分に愛情を注がれて育った人だから同胞への愛も強く、その反動で、同胞に害を為す不正義が許せない。世界最大企業を告発しようとするアヤンは、執拗な嫌がらせを受けて時には家族や自身にも身の危険が及ぶけれど、それでも告発を諦めない。

 

PL(製造物責任)か公衆衛生か

アヤンは世界最大企業を告発しようとするけれど、製品そのものには瑕疵がない。それどころか優良品で、正しい使い方、衛生的な水に溶かしてさえ使えば、きっと粉ミルクそのものは栄養満点。

 

PL(製造物責任)で罪に問うのは、筋が悪いんだ。製品そのものには、問題がないのだから。問題は売り方。

 

グローバル企業がローカルスタッフを雇用するのは、現地事情や人脈をあてにしてのこと。だから、現地事情に詳しい人の方が有利。なのに、不衛生できれいな水が入手できない家庭にまで、粉ミルクは普及してしまった。粉ミルクを彼ら、時にはスラムの住民にまで薦めたのは、医者たち。医者である彼らは、患者の家庭環境を知らないはずがない。

 

セールスマンであるアヤンは、粉ミルクは衛生的な環境でしか効果がないことを、もっとアピールするべきだった。

 

用法上の注意について、聞かされていなかったと医師の怠慢を許してしまう状況を作ったのは、アヤンの怠慢。善良な彼には思いもよらない取り扱い方をする人がいることを、もっと考慮すべきだったんだ。

 

日本でも乳児に蜂蜜を与える人がいて問題になっていたけれど、問題になることで、社会の分断もはっきりした。私はそんな使い方しちゃうんだ。。と驚いた方で、生育過程のどこかで“乳児に蜂蜜危険”と刷り込まれている。きっと粉ミルクを薦めた医師たちの中にも、思いがけない使われ方をしただけだと受け止めている人もいるかもしれない。

 

だから不衛生な水に溶かして飲むしかない“汚れたミルク”は公衆衛生の問題で、企業が責任を感じる必要性も無し。と元上司ビラルは割り切って、不正義と知りつつビジネスに邁進する道を選び、優秀なセールスマンであるアヤンを思いっきり利用する。

 

ここ、先進国と新興国が直接つながることで起きる問題その2。

 

情報の非対称性を利用すれば大儲けできるけれど、その代わり搾取され、時には子供の死やトカゲの尻尾きりで失職という悲劇を生んでしまう。

 

名前だけで商売できたら、誰もその中身をまともに精査しようともしない。世界最大企業の看板は、国内市場が育ってない新興国では絶大な信用を持って迎えられる。事実、製品そのものの質はいいんだから。

 

不衛生な環境では効果を発揮しない、生活実態とかけ離れているかもしれない割高なものを喜んで使って、子供を死なせてしまう母親の姿に絶句する。そんな世界は知らないから。

 

同胞と思える人は不正義に怒り、メシの種と思う人は悲劇ごときでは動じない。

 

コンプライアンスや人権が尊重され、公衆衛生が行き届いた先進国では起きない問題で、なおかつ新興国内、ローカルベースでは解決できない問題。

 

不適切な使用法を見過ごし続けて利益を上げ続ける世界最大企業を訴えたアヤンは、ローカルな生態系で甘い汁を吸ってきた人たちを敵に回してしまったから。

 

未成熟な新興国では、不正に加担した方が経済的メリットも大きいからどうしようもない。一方の先進国では、不正に加担すると経済的不利益が大きくなる。立派なルールブックは、公正であることにインセンティブを働かせるためにあるもんさ。

 

だから不正行為のエビデンスは、徹底的に隠されるか、そもそも残せないようになっている。コンプライアンス意識に乏しいローカルスタッフの暴走にすれば、世界最大企業には傷さえつかない。

 

アヤンに語らせ、アヤンにとっての真実を訴えるけれど、先進国は感情だけでは動かないし、動かせない。

 

罪のない子供たちの死に憤り、職を辞し、多勢に無勢で家族ともども危険に晒され、仕事を干され、兵糧攻めにされた。その事実だけでは、企業の責任を問うには弱過ぎる。

 

登場するのはアヤンを筆頭に、零細な個人と大企業と軍部と医者。文官どこよ?なローカルから、映画化という先進国のメディアで圧力をかけて問題を表面化しようとするけれど、それも頓挫。

 

物的証拠に乏しく法的に争うのは難しい事案だから、「可哀そう」「ひどい」という感情に訴えようとするけれど、「可哀そう」と憐れんでもらうには、絶対的弱者の方が有利で効果的なんだ。

 

ところが給料も保障されず組織のバックアップも受けられない個人の限界で、アヤンにも不利な事実が出てきたところから、雲行きが怪しくなる。

 

先を読んで行動するのは優秀なセールスマンなら当たり前で、先を読み過ぎたことが仇になったのか。当然の保身であっても、ハンサムで善良というアヤンのイメージを失墜させるのには十分。

 

巨大企業は、新陳代謝も激しい

告発系の映画では、フィクションの体裁を取っていても短命なことが多く、今後は多分動画にならずにスルーされていく可能性があるかもと思っている。(だからマイナーな映画でも、興味を持ったらできるだけ見に行く)

 

巨大企業の場合、その時そこに居た人を罰し、必要な対策を取って表面上はクリーンになる。器にふさわしくない社員を処分し、新陳代謝を図って別ものになろうとするから、問題が起こった前と後では違うもの。

 

クリーンになった会社を問題発生当時のままで語ろうとすると、名誉棄損や業務妨害になってしまう可能性がある。

 

中身がすっかり入れ替わった、国家並みの影響力を持つ大企業と一個人が衝突した時。高潔でない、高潔であろうとしても頑張り切れなかった零細な個人を「可哀そう」「ひそい」という感情に訴えずに救う方法はあるのか。

 

問題が発生した新興国には問題解決能力がなく、先進国でも法的にはグレーで白とも黒ともつかない複雑な状況を、複雑なまま理解した上で、どうすれば社会正義が実現するのか。裁判員裁判裁判員になった気持ちで、鑑賞してた。

 

問題解決能力に乏しい新興国を、先進国並みに引き上げコンプライアンスを遵守させたところで、意識が伴っていなければ、第二のダメな先進国が生まれるだけ。例えば過払い金請求のように、システマティックに被害者を救済する方法が編み出され、弱者であり続けることがメリットになってしまう恐れもある。

 

公衆衛生の問題でもあるから、“公“、パブリックを強くして、自国内ではパブリックの方が強制力を持つシステムに変えていくとか。思いつくのはそのあたり。高潔であることにインセンティブが働かないと、社会的不正義がはびこってしまう。高潔であるには金銭的誘惑に負けない財政基盤が絶対に必要で、飢えたトラは容易に暴走する。

 

どうすればよかったのか。一強の傲慢を許さない第二の存在があれば、アヤンの訴えだって喜んで聞き入れられたかも。

 

先進国と新興国が直接つながることで起きる問題は、これからも生まれ続ける。すべての基準を先進国、あるいは新興国に合わせ、ひとつになれれば解決するかもしれないけれど、多様性を残したい派としては、別の解を持ちたい。

 

ローカルに生き、ローカルルールに合わせて多少の不正義には目を瞑りつつ窮屈に生きるのか。グローバルに生き、グローバルルールに合わせて自由度がより高くなる高位高職をめざし、ローカルが変わるまで待つのか。どうすればいいのか。

 

とりあえず、多勢に無勢で数の力を信じて傍若無人に振る舞う勢とは、距離置きたいことは間違いなし。そこには、グローバルもローカルもないと信じたい。

 

お休みなさーい。

タッパーおばさん

夕方というにはまだ早く、日も落ちない時間なのにサラリーマンらしきスーツ姿で賑わうお酒を出すお店。

 

出張族か、あるいは直行直帰でNRを決め込んだ外回りの営業マンさぼり中の姿かと思ったら、プレミアムフライデーだったね、今日は。年度末でも四半期ごとの〆でもなければ、みんなリラックスしたいやね。リラックスタイムに財布の紐は開くのさ。

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特に働いてる風でもないのに、家の中は散らかりまくり。何が入ってるのか段ボールの箱が山積みで、処分しきれない空き箱が家の外にも溢れてる。そんなお家があれば良からぬこと、例えばマルチに手を出してるかもねと、もうひと昔前に人に教えてもらった。

 

相互監視で牽制し合い、ご近所の視線も厳しいなかで飛び抜けて乱雑なお家に住むある奥さんが、ある時から頻繁にテレビに出るようになった。これもひと昔前のお話です。

 

理由があってのこと。テレビに出るその奥さんは“被害者”で、執拗に加害者を糾弾していた。不幸な出来事といえば不幸な出来事だけど、世の中にはままあること。なのにその人ばかり執拗にメディアに取り上げられるのは、一体どんなカラクリがあるんだと不思議だった。

 

今ならわかる。テレビに出てたその人はいわば“被害者代表”のようなもので、その人の背後にはその人を支援する組織、一緒になんだか胡散臭いことをやってる人たちが居たからだと。

 

興味のない人を無理やり勧誘して、物を買わせれば手数料が入る仕組みにどハマりしている人は、ハマってない・ハマりようもない人からすれば迷惑極まりない。時には蛇蝎のように嫌われるから、反動として嫌われない仲間内での結束が強くなる。

 

あるいは抜け駆け禁止の絆は呪い案件で、酸いも甘いも一蓮托生。絆が切れないガソリンを常に欲しているから、儲け話に敏感と言い換えればいいのか。要するに金蔓は掴んで離さない。

 

乱雑なお家に住んでいたその人は、どこかのグループにとっての金蔓で、その人が将来手にするかもしれない和解金や示談金がグループを潤す可能性があったから、応援団がたくさんついた。

 

としか考えられないくらい、事実だけを羅列した非公式な記録と、近くで見ていた肌感覚や伝聞あるいは風評が大きく違う。今改めてその当時の事件記録(新聞にも大きく取り上げられた事件)を読むと、ゾッとする。

 

大事なものが掌からすり抜けた後でしおらしく振舞うくらいなら、最初っから大事にしとけよ。

 

が、近くで見聞きしていた肌感覚にもっとも近い。もっと身も蓋もない言い方をすれば、負けが込んで無い袖は振れないと追い詰められたあげく、博打に打って出たのかと思うくらい、後味の悪い出来事だった。

 

あるいは筋の悪いグループに目をつけられ、嵌められたのか。点と点を結んだら、そっちの方が可能性としてはありそ。

 

最初のドミノを誰が倒すか問題で、ひとつ倒れたから後に続いた人がいる。毟られる金主からすれば流れ弾に当たったようなもので、要するにもっとも”お金持ってそう”だから狙われただけ。というのが私見。決着が着いた後に、誰も藪つついたりしないけどね。

 

ハマってない・ハマりようもない人からすれば、どハマりしている人たちの価値基準は、到底受け入れ難い。同じ人の皮を被ってはいても、ヒトとは思えない所業だから、ヒトじゃないものの方が信頼できる。

 

というわけでヒトじゃないもの、AI相手に暇をまぎらす日が来るのを待っている。

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たかが8ページの特集に一本釣りされて、買ってみた初めての雑誌。表紙をめくったらいきなり望んでもいないものが目に飛び込んできて、ゾーニングされたデジタル空間の快適さ、ステキ過ぎた。

 

お休みなさーい。

藤の花が見頃の前田森林公園に行ってきた

アレグラひと箱2週間分28錠を飲み切ってもなお、いまだ治まらない花粉症。2週間もあれば完治すると思ったのに、ちくしょうどうしたことだ。来年はちゃんと病院に行って処方してもらおう。。

 

花粉症で体調はイマイチながらも、ライラックをはじめとしていろんな花が見頃を迎えている今日この頃。藤の名所である前田森林公園に行ってきた。

 敷地内に森をいくつも擁する、馬鹿げて広い公園。訪れるのは年に1回か2回。藤の花が見頃の頃に訪れる場所になっている。

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タンポポの綿毛ふわふわと舞う。そう書くとファンタジックな響きがあれど、実際はこいつもアレルゲンの一種なので、油断ならねぇ。

f:id:waltham70:20170525225615j:plainジオラマモードでことさらファンタジックに加工してみる。でもアレルゲン。)

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一面のタンポポ畑。北海道の遅い春を代表する風景のひとつではあれど、こいつもいつかはアレルゲンと化す、アレルゲン予備軍。恐ろしい恐ろしい。

 

馬鹿げて広い公園のランドマーク的存在、カナール。全長約600メートルで、テケテケとウォーキングするのにちょうどよい場所。両端はポプラ並木になっていて、今の季節は若木だか若葉だかの、清々しい香り付き。いい匂い。

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広いカナールで、鴨ものびのび。鳩や雀とも違う鳥ものびのび飛び回ってる。そういやここ、“野鳥の森”なんてものもありましたね。

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何回も来ているので、全景を撮るのはすっかり失念していた、サンクガーデンの藤棚。

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サンクガーデンって何さ???と思ったら、ちゃんと「沈床花壇」という名称が付いておりました。庭園用語っぽい。藤棚以外の、カナールとの間に位置するガーデンをサンクガーデンと呼ぶらしい。なるほど。

 

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見頃となった藤の花。本来だったら藤の花特有の甘―い香りが漂ってきそうなものだけど、詰まり気味の鼻に届くのは、ライラックの香りのみ。

 

見上げ続けていると首が痛くなるほど、背の高―い藤棚。残念ながら藤の芳香は、頭上はるか遠くを通り過ぎて行ってるらしい。今まで生きてきていっちゃん気の利いたニックネームは「Two Two」だったな、と唐突に思い出す。2メートルまであと2センチだから「Two Two」と呼んでくれって、今から考えたらすごい気障だったな。

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ワイルドな環境に感化されてか、ワイルドなライラック

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写真に撮ってみると、あらきれいねー。

 

ちんまりと行儀よく躾けられた、大通公園創成川公園のものと比べると実物はもっとワイルドで、なんというか、野生児な雰囲気も濃厚。大通公園創成川公園のライラックがクララで、前田森林公園ライラックはハイジだな。クララが立った!をまさか21世紀になって実写で見るとは、思いもしなかった未来だこと。

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黒板と、木のベンチ。森の中の教室ができちゃうね。生徒より、教える人がより気持ちよさそう。

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(採取禁止)

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白い花をつけた木もたくさん見かけた。梨の仲間やスモモも居たけれど、こいつは“エゾコリンゴ”。リンゴというには、あまりにも小さな実をつけるらしい。

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大変だだっ広い場所なので、毎回駐車場に帰る道がわからなくなって迷う。どこ見ても緑緑緑で、違いわかんないからな。。

f:id:waltham70:20170525225441j:plain(こいつは盛りを過ぎてかなりピンクっぽくなった緑の桜、御衣黄
これだけ広い公園が近所にあれば、運動不足には悩まされずにすみそ。ほどよく手入れされて、軽食が食べられる休憩所もある有人管理されてる場所。安全だから、安心してテケテケと歩ける。

 

藤をはじめとした季節の花に緑に。きれいなものしか見たくない気分にぴったり。きれいなものはとっても脆くて壊れやすいから、粉々に壊れたらもう元には戻らないのさ。藤の花の季節以外にも、運動しに来るようにしましょ。

 

お休みなさーい。

waltham7002.hatenadiary.jp

 

去年と違うこと

晴れ時々雨。好天が続いた陽気もここまでか。シラカバ花粉およびハンノキ花粉の飛散も、曲がり角と思えば歓迎さ。

 

去年まではなくて今年から始まったのが、シラカバ花粉症。去年の今頃は、熱くもなく寒くもなく、最も過ごしやすい時期を存分に謳歌してた。今年はダメ。花粉症のせいで、QOLがだだ下がり。

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花粉症、コップから零れたミルクのようなもので、アレルギーに対する一定の耐性はあっても、許容量をオーバーした瞬間から発症し、もう元の状態には戻れない。投薬という対症療法はあっても、根治は難しい。抗アレルギー剤のおかげで症状は治まっているけれど、喉のイガイガという違和感は抱えたまま。

 

環境が変わり、スギ花粉症とはもう永遠にオサラバだと思っていたのに、どうしたことか。シラカバ花粉という落とし穴が待っていた。

 

アレルゲンのないエリアに、引っ越したい。。

 

という埒もないことを書くのにすでに300文字以上使ってる。この時間をもっと他の有意義なことに使えればいいんだけど、頭ボンヤリ・鼻水にかゆみで集中できないから、埒もないことを書いている。

 

昔読んだ本に体の弱い登場人物が出てきて、頭痛などがひどいと、体調の悪さがあらゆることに優先して、世界のことなんてどうでもよくなるという記述があったけど、まさにそれ。

 

健康だとあらゆることに対して吸収がよくなるから、健康大事。ほんと大事。ジムに通ったりするのは好きじゃないから(更衣室で着替え中にご近所さんとご対面、あらこんにちは~とか挨拶したくない)ので、せっせとテケテケ歩いてる。

 

単純にスコア、歩いた距離と消費カロリーの、積み重ねを見るのが楽しい。

 

ライラックが見頃となった今の季節は、歩いているとふんわりいい香りが漂ってくる。

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鼻詰まりの鼻にも届くくらいだから、相当な芳香。チューリップのような球根で育つ花と違い、桜にライラックや木蓮は、大木になるまで時間がかかる。よくもまぁここまで育ったものよと、しみじみもできる。

 

樹木が多い街は、木が育つのを見守ることができた街とも言えて、街路樹が立派に育った町は、どこも空気がゆったりどっしりしていたような気がする。

 

落ち葉掃除に、木に付く虫に。切ってしまいたくなる葛藤を超えて、気長に見守ること。すぐに結果が出ないと癇癪起こすようなせっかちだと、耐えるのも辛そ。

 

要するに体調が整うまでは、集中力も続きません。葱しょってない鴨でも眺めながら、心を落ち着かせよう。

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お休みなさーい。